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http://www.asahi.com/paper/editorial20030603.html
6月3日付け朝日新聞社説
■麻生発言――ソウル大でぜひ講演を
自民党の麻生太郎政調会長が、おかしな発言をした。
○いきなりである。
東京大学での講演で、日本の植民地支配下での朝鮮人の創氏改名について、朝鮮の人々が「満州で仕事がしにくかったから、名字をくれと言ったのがそもそもの始まりだ」と説明した。「ハングルは日本人が教えた」と、日本の統治がハングルの普及に役だったとも強調した。
発言に対して韓国政府が「失望」を表明し、謝罪を求めた後、麻生氏は「韓国の人を傷つけたことをおわびしたい。言葉足らずだった」と釈明した。
歴史を見れば、麻生氏が指摘したような事実は、部分的に、あるいは一時期あった。
○歴史的にみて、麻生氏の発言のような事実はあったと認めている。実際にあったのである。
しかし、彼の発言は誤りである。
まず、自分に都合のいい事実だけを取り出し、それが歴史の全体像であるかのようにいいくるめようとしていることだ。
○これは朝日の常套手段ではなかっただろうか。こういうことを書くのであれば、全体像をぜひ日韓で歴史認識がまとまらない現状を全体的にレポートしてほしい。1910年からの日韓関係を語るという、歴史の一部だけを報道するのではなく、明治維新からの日本の立場や当時の世界の列強の帝国主義的領土拡張政策にも言及すべきだ。自分たちのやるべき事をやらず、他人の揚げ足を取るのはいかがなものかと思う。
日本政府が植民地時代の朝鮮半島に鉄道や道路、学校をつくったことをあげて「いいこともした」と主張する政治家は過去にもいた。そうした論者といえども、日本が軍事力を背景に朝鮮を併合し、強権的に支配した事実を覆い隠すことはできない。
○植民地時代(本来は併合時代というべき)にいいことをした、と発言して、韓国が大騒ぎして過去に何人もの閣僚が首になってきたがこの段落では、「いいことをした」と主張する政治家の存在は述べているが、それに対する朝日の立場を表明していない。朝日は「いいことをした」事実があったのかどうか、表明すべきだ。事実、当時の朝鮮半島は貧しく道路、鉄道、港湾、学校は日本が整備したものである。
「いいことをした」という発言に対して自社の意見を表明せず、朝鮮半島併合の事実を批判するだけである。直前にこの同じ社説の中に「まず、自分に都合のいい事実だけを取り出し、それが歴史の全体像であるかのようにいいくるめようとしている」と述べるのであれば、大きな歴史の全体像として朝鮮半島併合政策を語るべきじゃないのかと思う。
創氏改名は、日本が朝鮮の人々を「皇民化」するために、心の内側にまで統制を加えようとした政策だ。学校での朝鮮語の使用も最後は事実上できなくなった。
○こうした意味ももちろんあったはずだ。しかし、これは歴史の一部分でしかない。麻生氏の発言にあるような背景もあったはずだ。
朝鮮の人々のなかに日本式の名字を欲しがった人がいたとすれば、なぜなのか。植民地支配が生んだ差別を逃れようとしたからだ。この差別を作ったのは日本である。そこに思いを寄せることのない、麻生氏の想像力の貧しさを悲しく思う。
○麻生氏の発言の一面性だけを取り出して批判しているが、逆に言うとこうやって批判される一面的な発言をしてしまった麻生氏の脇の甘さという感じである。ただ、批判されないような発言をしようとすると、自虐的な発言になるのは間違いない。それはやっぱりおかしい。
日本の閣僚や自民党の有力者が、韓国の植民地支配や中国侵略を正当化するかのような発言をし、韓国、中国で大問題になる。日本側でも「歴史問題でいつまで謝ればすむのか」と反発が起きる。80年代からしばしば繰り返されてきた構図である。
だが、93年には当時の細川首相が訪韓時に創氏改名を謝罪し、日韓関係を大きく前進させた。98年の日韓共同宣言も「過去」の直視と「21世紀の確固たる善隣友好協力」をうたい、日韓間のあしき構図を絶つための努力が重ねられてきた。
○日本側に譲歩を薦めてどうすんだ。どこの国のメディアなんだ、ああ、半島系か。
日韓両国はいま、北朝鮮問題をめぐってますます強い連携を必要としている。互いのナショナリズムを不健全に肥大化させるのは、何よりあってはならないことだ。しかも、盧武鉉大統領の来日直前である。麻生氏の外交感覚を疑わざるを得ない。
麻生氏は講演で「向こうには言わせておけばいい。こっちは堂々と自分の話をすればいい」とも述べた。これでは、外交などもとより不要だということになる。
○歴史認識で共通の理解はもてない、という話であって、外交政策全般の話ではない。そこを朝日は意図的に隠し、お互いにばらばらの外交をすべきだと麻生氏が言ったようにミスリードしようとしている。そもそも、外交であっても常に協調させる必要はない。アメリカのイラク戦争に日本政府が協調したとき、反発したのはどこの新聞だったのか、国民はいまだに忘れてはないだろう。
自民党内で、麻生氏は小泉首相の後継候補の一人と目されているが、いまのままでは国政を委ねるわけにはいかない。麻生さん。まずソウル大学で学生たちとじっくり語り合ってみてはどうですか。
○言論の自由を協調するわりに、ものをしゃべれない雰囲気でしゃべらせようとするその底意地の悪さに驚きを感じる。そもそもなんだ、ソウル大学の学生の前でしゃべれとは。なんだ、これは!韓国人が持つ歴史認識を、日本の政治家にも求めるということか?朝日はどこの新聞なんだ?ああ、半島系か。
ちなみに麻生氏の発言要旨は以下の通り。
http://news.goo.ne.jp/news/asahi/seiji/20030602/K0002201910021.html
麻生太郎・自民党政調会長が31日に東京大学の学園祭で発言した「創氏改名」に関する内容の要旨は以下の通り。
質問者: 中国や韓国と外交をするうえで、歴史問題をどうすればいいと思うか。
麻生氏: 歴史認識を一緒にしようといっても、隣の国と一緒になるわけがない。たとえば朝鮮人の創氏改名の話。日本が満州国をやる前に創氏改名の話が出たことは一回もない。しかし、当時、朝鮮の人たちが日本のパスポートをもらうと、名前のところにキンとかアンとか書いてあり、「朝鮮人だな」と言われた。仕事がしにくかった。だから名字をくれ、といったのがそもそもの始まりだ。これを韓国でやりあったら灰皿が飛んできた。そのときに「若い者じゃ話にならない、年寄りを呼んでこい」と言ったら、おじいさんが現れて「あなたのおっしゃる通りです」と。ついでに「ハングル文字は日本人が教えた。うちは平仮名を開発したが、おたくらにそういう言葉はないのか、と言ってハングル文字が出てきた」と言ったら、もっとすごい騒ぎになった。その時もそのおじいさんが「よく勉強しておられる。あなたのおっしゃる通りです」と言って、その場は収まった。やっぱり、きちんと正しいことは歴史的事実として述べた方がいい。
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